5月28日(木)から31日(日)までの4日間、福岡にて「デザインウィークエンド福岡」が開催されました。福岡では10〜12年ぶりとなるデザインイベント。とても楽しませていただきました。
イベントに合わせて週末の2日間は「オープンスタジオ」として事務所を開放し、展示などを行いました。来てくれたのは建築・デザインを学ぶ学生や設計者が約3割、残りの7割は一般の方。お話を伺うと「建築やデザインに興味はあっても、事務所を訪ねる機会はなかなかないので来ました」という方が多く、来年以降も何か別の形で開催してみようと思っています。お越しいただいた皆様、ありがとうございました。
週末2日間の夕方以降は、企画展「DESIGN・MEETS・YOU」の展示会場となっていたワン・フクオカ・ビルディング1階に滞在していました。普段お会いできない方々との会話は、やはり楽しいものです。その中で、ひとつ心に残る出来事がありました。
展示していた天水チェア(熊本県玉名市天水にある福祉施設の相談所で使用している椅子)の前で、一人の女性が無言で立ち止まっていました。
声をかけてみると、「この椅子を譲っていただけませんか」とのこと。
話を聞くと、数年前にご主人が軽い脳卒中で倒れ、それ以降、身体が不自由になってしまったとのこと。ご主人に合う椅子をずっと探していたそうで、話しぶりからデザインへの深い素養をお持ちの方だと感じました。著名デザイナーの名作椅子もいくつかお持ちだそうですが、いざ体が不自由になってみると、サイズやアームの位置・高さ、椅子の重量などがネックになり、なかなか合うものが見つからなかったとのこと。
この天水チェアを見て、「これならご主人にも使いやすいのではないか」と思い、立ち止まっていたそうです。「体を壊してから、生活やインテリアを楽しむような前向きな気持ちになれずにいましたが、この椅子を見て少し希望が持てました」——その言葉を聞きながら、福祉施設の高齢者や障害のある方のためにデザインされた椅子が、同じような境遇にある方にとってこれほど響くものになり得るのだと、改めて気づかされました。ある人にとっては0点でも、ある人にとっては100点以上になり得る。「何のためにデザインするのか」「どのようにデザインしていくのか」と問い続けてきた者にとって、とても勇気づけられる出来事でした。
一度ご主人に座っていただき、サイズ感や座面の高さなどを確認した上で、2脚お渡しできればと思っています。
2005〜2014年の10年間、設計や建物をつくることではなく、イベントという「時間と場所を共有することでしかできないこと」に取り組んできました。しかし記憶には残っても実際の場所として残らないことに建築家としてのジレンマを感じ、その後の10年間はイベントの企画から離れ、建築設計でできることに向き合ってきました。
写真とテキストさえあれば情報がどこまでも飛んでしまう時代に、「時間と場所を共有することにどんな意味があるのか」——この問いは、デザインイベントを企画・運営していた頃からずっと考え続けてきたことでもあります。
それでも今回、準備期間が短いながらもイベントがあるというだけで、久しぶりに連絡を取った人たち、久しぶりのメンバーでリアルに集まる機会が生まれました。何事もまずやってみること、まちの中に「機会」をつくることの大切さを、改めて実感する時間でした。デザインウィークエンド福岡は今回が「第0回」、来年以降が正式な第1回目とのこと。来年も楽しみにしたいと思います。
企画・運営の皆様、貴重な機会をありがとうございました。お疲れ様でした。