既存の仕上げ・設備をすべて解体撤去し、スケルトン化した上で、耐震性向上のための構造改修を行いながら、住戸プランの再編を行っている。
建物は東側にバルコニーを持ち、自然豊かな室見川の風景を望むことができる。
Awareness
この建物は、2010年代からリノベーションを通して関わってきた集合住宅である。
関わり始めた当初は、最寄りの公共交通機関の駅まで距離があり、この立地はデメリットとして認識されていた。しかし、震災やコロナ禍といった経験を経て、この場所は異なる輝きをもって見えるようになった。
室見川の河口付近に位置するこの敷地は、東側に水辺の風景を望む。都市でありながらリゾートのようでもある、都市と自然のあいだに位置する場である。「住まい手の解釈によって、それはリゾート的にも、都市的な暮らしの延長としても感じられる。そのように解釈可能な抽象性を保った居場所をどのようにデザインできるだろうか?」
この気づきと問いが、本計画におけるプランニングとデザインの出発点となった。
process
model
改修後は、すべての住戸がリバービューのリビングを持つ構成へと再編し、日常の中で水辺の気配を感じられる住まいへと更新した。
本物件は、約10年前に一室のみリノベーションを行った経緯がある。
しかし当時は、都市とリゾートの狭間に位置し、駅からもやや距離がある立地であったため、そのポテンシャルを活かした計画が人々に受け入れられるかについて、クライアント・設計者ともに半信半疑であった。その後、東日本大震災の発生や移住者の増加、さらには新型コロナウイルスによる社会的変化を経て、人々の価値観や暮らし方は大きく多様化した。都市中心部に限らない、低密度で自然に近い場所の価値が見直されつつある現在、この場所の魅力はむしろ再発見されつつあると考えている。
都市とリゾートの狭間、地面と水の狭間、そして海との狭間。複数の「あいだ」に位置するこの場所は、住まい手の感覚によって、都市的にもリゾート的にも立ち現れる抽象性を内包している。本計画では、その抽象性を積極的に引き受け、この場所だからこそ成立する日常のあり方を構想している。既存は、約40㎡を基本とする全21戸の集合住宅であり、室見川に面していない住戸も含まれていた。これに対し、隣接する2戸を統合して約80㎡の住戸へと再編することで、すべての住戸が室見川に面する計画とした。さらに、リビングのソファから川を望めるよう、バルコニー手すりをガラス化し、視線の抜けを最大化している。福岡において「水辺」という立地を最大限に活かすことで、都市の居住環境に新たな選択肢を提示し、街の多様性を拡張する一助となることを目指している。
[写真クレジット]
スライダー ©Koichi Torimura
1~35 ©rhythmdesign



















