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【問い / Vision】
物・人を媒介にした地域文化の継承を目指し、ショップを運営している福岡県八女市にある地域文化商社と、歴史的建築物の活用を起点にその土地の歴史文化資産を尊重したエリアマネジメントと持続可能なビジネスを実践してきたチームとともに、『宿泊』をつくる。地域文化商社がこれまでの過程で出会った人や技術、知恵、文化を、体験的に知ってもらう場であるが、宿泊施設として独立した存在でなく、これまでの活動の延長線上にある場であり、そのためのツアーや紙媒体も用意する予定だ。
これまでの『商品を見る/買う』という関わり方に加えて、宿泊体験を通して『商品を感じる/体験する』ことができるようになるため、その商品の良さを体験的に知ってもらうことができる。その体験を通じて、手業や技術に意識や目線が向かうような状態をどのようにしたら実現できるだろうか?という視点を軸に全体からディテールまでデザインしようと考えている。
同市にある本店では「九州ちくごのアンテナショップ(=Local)」として、旧寺崎邸で は「世界・日本のリファレンスショップ(=Grobal)」としてのポジションを確立すると同時に、体験(コト)を通して、より深く、知り、学ぶことができる場づくりを目指す。
【式 / Concept】
Ordinasry Landscape
『古き良き日本の生活』を再現するのではなく、
『生きた景観』として、宿泊体験をデザインする
例えば、知人の家や仕事場を訪れたときに沸き起こる、戸棚に収集された物たちや、書棚に並ぶ書籍を眺める時の楽しさを想像してみる。誰かが時間をかけて「収集と陳列」を行ってきたその集積が、言葉ではなく体験の総体として語りかけてくる、そこにお邪魔する。「古/新」「商品/持ち物」「公/私」の線引きなく、それらを一緒くたに包括し、それを繋いでいくような態度で、「ホテル」という言葉から連想されるような現実から切り離された「非日常」ではなく、ここで実現される、こうありたいと想う「理想の日常」をデザインする。
そこでの体験は、遠い過去への礼賛ではない。たとえ都心のマンション暮らしであっても、自分の生活や日常に引き寄せ、持ち帰ることができる。それぞれの日常と地続きにある体験を提供する場を目指す。
【答え / Object, Detail】
1.Sequences of texture/肌触りのシークエンス
触れただけの『モノの手触り』だけではない、情報の背後にある手技や八女の材料も含めた『情報の肌触り』までも感じられるような状況にすること、また、宿泊したその時間や、季節、年月、ツーリズム、ショップ、宿泊を通して、表層のみではなく生きた状態を伝えることを目指している。ただ単純に絣や工芸品の物質としての手触りではなく、都市で生活や仕事をする私たちが置き去りにしてきた解像度や、情報の手触りとでもいうべきものも含め、「シークエンス」としてデザインすることができないだろうかと考えている。地域文化商社が持っている百科的な情報量を、我々リズムデザインが翻訳的に読み良き、デザインしていく。例えば、元々ある提灯の型を引用してつくるランプシェード、地元の土を固めてつくるレンガタイル、現場の襖紙を粉砕し漉き込んだ和紙、襖柄や格子をモチーフにした絣のパターン、外壁の色をサンプリングで染色された絣、地元の左官職人さんに研ぎ出してもらうテーブルの天板など。
また、宿泊だけでなく、ツーリズムやショップを通して、八女の町に残る手技や材料など、地元では当たり前のものとして埋もれていたものを丁寧にあぶりだし、『生きた状態』として情報に触れることができる状況を作ることを目指している。
2.Forme / Foundation / Abstruction / Sampling(型/基礎・ベース/基壇/抽象化/標本化)
すでに素晴らしい地域や文化、人や物は、そこに在る。
それらの魅力を加飾せず、過不足なく『生きた景観』として伝えるには、どのようなデザインが相応しいだろうか。
ここでの主題は「場・デザイン」ではなく、そこで生まれる交歓であり、「物・人」を媒介として体験される「地域・文化」である、と思う。その体験を支える(視点を与える / Encounter)ための装置として、それぞれの「良さ」をあぶり出すような、『型』としてのインテリアを考えている。