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謹賀新年 / 2011 / 元旦 / 10年

あけましておめでとうございます。
2011年になりましたね。
昨年は本当にたくさんの出来事がありました。デザイニングのチームで携わった2つのプロジェクト(IMS / わたしのばしょ / 企画・プロデュース・会場設計、福岡パルコ / once A month / インテリアデザインなど)や、リズムデザインとして初の九州以外の地域での設計プロジェクト(BA to MA / 展示会場設計 / スパイラルホール)、行ノ町テラスやコーポ諸岡などのリノベーションなど、独立してから最も多くのプロジェクトを完成させることが出来ました。今まで以上にたくさんの設計競技にもお声かけいただき、たくさんの提案をさせていただきました。また、福岡では初めて展覧会「5×2020」展(福岡を拠点とする5人の建築家によるグループ展)へ出展し、3年ぶりにウェブサイトをリニューアルするなど、これまでの活動をアーカイブする年でもありました。スタッフにも恵まれ、本当にたくさんの方々に支えらた一年でした。
2000年に大学を卒業して社会に飛び出した私にとって、今年はあたらしい10年のはじまりです。事務所としては、4月で8年目に突入します。これからも、これまで以上の思考と視野をもって、たくさんの設計を行いたいと思っています。本年もみなさまのご指導、ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

これまでの数年間は、その年にやりたいことや目標について、年賀状に書き記してきました。今年は、自分たちの考えや情報を発信し、蓄積していくための場所としてウェブサイトをあたらしくしたので、ここで、今考えていることを少しだけ書き留めておこうと思います。

自分たちなりのあたらしさ
昨年から今年にかけて計画・工事が進んでいるものの中には、私たちの「手の痕跡」がほとんど残らない(あたらしくデザインした箇所がとてもわかりにくい)プロジェクトがいくつかあります。福岡市の百道地区に立地するホテル「ハイアット・レジデンシャルスイート・福岡」の改修・修繕計画(ホテルとして短期的な滞在が出来るだけでなく、中・長期的な、住居としての利用も可能な施設)や、築35年を超える分譲マンションの長期修繕計画と、それに基づく改修計画などがそれです。どこまでが既存の状態で、どこからが私たちが試行錯誤し悩んで設計したものなのか、既存のものとあたらしいものとの境目がどこなのか、とてもわかりにくいプロジェクトです。
年月を経た建物には、私たちが全てをあたらしく設計したときには備えることのできない、情報量や質感があります。既存のものが持っているキャラクターを尊重し、その情報や質感に接続的に、連続的に設計することで、あたらしい状況や風景、価値をつくる。ぱっと見には何があたらしくなったのかわからないが、どこかあたらしい。いろいろな情報や状態を私たちなりに解釈した末に、結果としてそのような状態を目指すことが相応しいと判断したのですが、自分たちだけでは到底つくることのできない状況が生まれようとしていることに、「ゼロ」からつくることとは少し違った、とても現代的なあたらしさを感じています。

そのできあがろうとしている状況以上に、このプロジェクトのはじまり方にも、ある種のあたらしさと未来への可能性を感じています。上記2つの計画は、どちらも設計競技(設計者選定の意味合いが強いものでしたが)として指名を受け計画がはじまった、改修(リノベート)・修繕を目的としたプロジェクトです。
通常でれば、改修・修繕業務を専門とした設計事務所やコンサルタント、施工会社などがその業務を請け負うことも多い内容のものでした。しかし、2つのプロジェクトのクライアントは、「既存の建築物や敷地をどのように解釈するか」「それによってどのような提案を行うか」「長期的なビジョン(計画)を念頭に置き、情報にどのような階層(優先順位)を設定するか」などの問いかけを、私たちのような「建築家」に行いました。クライアントからそのような真剣な問いかけがなされたことがうれしかったと同時に、色やカタチとして表面に現れるものだけでない部分の設計が「建築家」に求めらたこと、新しい建築を設計するだけでなく「解釈」のあたらしさを求められたことに、現代の社会の中で建築家にできることが、まだまだたくさんあると実感することができました。これからも、色やカタチだけではない、私たちなりのあたらしさを目指して、設計に携わっていきたいと思っています。

2011年
元旦
井手 健一郎