THNKNG

  1. Top
  2. THNKNG
  3. DESIGNEAST 2010 / 大阪

DESIGNEAST 2010 / 大阪

DESIGNEAST/デザインイースト」は、大阪で新しく始まったデザインイベント(昨年秋にプレイベントとして「00」が開催された)です。「国際水準のデザインが生まれる状況をデザインする」ことを目的としたイベントで、デザインの展覧会のように「もの」が展示されるだけではなく、集まったみんなで「議論」するなど、とても体験的なイベントです。今年が「01」第一回目の開催であり、国内だけでなく世界中からデザイナーが招集され、たくさんのことが議論されました。

>>>
先週末は大阪で開催された「DESIGNEAST 01」に訪れた。とても体験的なものだった。デザインが展示され、それを閲覧し、そのオブジェクトの「かたち」が脳裏に残るのではなく、レクチャーやワークションプなど、「かたち」よりもそこでの体験が記憶として残っている。柳原くんが言う「デザインする状況をデザインする」ことや、家成さんたちDOTSが目指す「超並列」というスタンスが、そのままイベント/出来事になったような印象だった。会場に集まった人たちが一緒に「何が国際水準のデザインなのか?」と、考えることが出来る場所だったと思う。 マーリ(エンツォ・マーリ ※括弧内追記)は、「安価な商品(マーリは、思想に基づいて生産された製品と、そうではないものを商品として、完全に区別して話しています)を大量につくるためには、無知な労働者が必要だった。そのような安価な商品を販売するためには、消費者を無知にしておくことが必要だった。そのようにして、グローバルマーケットは成立している」と語った(※1)。「私はデザインに対する正当な対価をもらっていない」とも。「反体制/反権力」と語る彼自身は「消費者や企業を無知ではない状態にしたとき、この状況はより良い方向に変わる」と思っているのだろうか? また、「変えることが出来る」と思っているのだろうか? これからそのような状況と対峙する立場の人間としてとても気になったが、それは主催者を含め、会場に集まった全員に突きつけられた宿題だと受け取った。今のところのボクたちの立場としては、「消費者/受け手」を直接変えるきっかけをつくることが一番の近道だと思っている。このDESIGNEASTや、DESIGNTIDE、ROUNDABOUT JOURNAL、DESIGNINGなど、日本にもたくさんのデザインイベントやムーブメントがある。それぞれ場所もやり方も違うけれど、「現状をより良くしたい」という根っこの部分は一致している。いろいろなムーブメントに触れる度に、「同じ世界の中で活動しているのに、やり方はこんなに違うのか!」と驚く。日常的に対峙してる状況が違うから当然だが、その違いが楽しいし、それによって自分たちが出来ることや出来ないこと、やりたいことややりたくないことが明確になっていく。そうやって相対化し合えるたくさんの真剣なムーブメントや価値観があることが、とても大切だと思う。大阪で真剣なメッセージを突きつけられたので、ボクたちも頑張らなければ。このイベントの企画運営に携わったみなさま、ありがとうございました。
(>>> 以降は、Twitterでの発言を一部修正し掲載したものです)

※1:例えば、自分たちの家を手に入れるときに、「室内の壁の色はこの10,000色の中から選ぶことが出来ます」と言われたとします。選ぶ色が10,000色もあるので、とてもたくさんの選択肢の中から自分たちなりの色を選ぶことができように思えます。しかし、それ以前に、壁は木でつくることも出来るし、土を塗ることも出来るし、「色」以前の「素材」やつくり方自体を選ぶこともできるはずです。家にとってとても大切な部分(木に例えると幹の部分)を決めているつもりが、予め用意された範囲の中で、そうではない部分(幹ではなく枝葉の部分)の議論をしている。今日のように情報化が進むまでの産業の仕組み(大量生産/大量消費/標準化などの価値観)の中には、そのようにして消費者の方たちを「無知にしておくこと」、つまり、適切な情報を適切なタイミングで提供しないことで、成立していた一面もあります。