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1995年の「windows95」登場以降、世界各地で仕事の電子情報化・グローバル化が進み、オフィス(執務空間)の形態は大きく変わった。単位面積当たりの必要電気容量の増大に伴い、人に根ざした快適性ではなく、OAフロアや空調、照明計画などによる設備的な快適性が求められるようになった。また、情報化はオフィスの在り方までも流動的なものに変えた。パソコンとインターネットに接続された環境さえあれば、場所に関係なく何処にいても仕事が出来るようになり、その結果、「スモールオフィス/ホームオフィス」など、たくさんの働き方が生まれた。オフィススペースにおける設備的環境の整備は、社会的需要の変化に対応したものだが、このような「働き方」自体の変化は、働き方を既存の空間に順応させようとした結果生まれたものである。現在供給されているオフィスは、設備や表層の表現が新しいだけのものが多く、根源の部分で全く新しい働き方や生活像を提示したものはほとんどありません。私たちは、色やカタチ(表層)だけでなく、全く新しい働き方(深層)をデザインしたいと考えた。
「情報化」により、何時・何処にいても、誰とでも簡単に繋がることが出来るようになり、仮想の「共同性」が補強されてきた。その一方で、2005年春に施行された「個人情報の保護に関する法律」などにより現実の事務所スペースは、「個別性」が強化されている。私たちがデザインしたものは、リアルな「共同性」だけが存在し、個人が占領出来る「個室」はどこにもない、全員でひとつの空間を共有するシェアオフィスであり、誰かと顔をあわせ、コミュニケーションが生まれるような環境だけが用意されている。「共同性」が担保された事務所スペースでは、常に新しいつながりが生まれ、会話や議論が生まれる。そのような共同性のデザインこそが、これからのオフィスにとって重要だと考えた。