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福岡市中心市街地より車で1時間程の場所に計画された住宅のコンペ案。三角形をした200坪の土地に、ご夫婦が暮らすための20坪の住宅を設計することが求められた。自然環境に恵まれた敷地で、南側には池、南西には竹林、北東は小さな山など、周囲にはたくさんの自然があった。クライアント夫婦もこの自然環境に惚れ込んで、この土地を取得していたため、出来る限りたくさんの風景と接することができる住宅を目指した。
敷地の脇にはイチョウの木と栗の木が残っており、夫婦はこれを残すことを望んでいた。このシンボルのようなふたつの木を、眺める対象としてではなく、建築を構成するための要素として捉えられないだろうかと考えた。私たちは、建築がふたつの木と同じ距離で接するように建築の芯を設定し、1/10の内部(家)と9/10の外部(庭)が等しく計画された住宅を計画した。
この住宅には、栗の木とひとつづきの場所、イチョウの木とひとつづきの場所、森が見える場所、山が見える場所という4つの空間がある。その4つの空間の基準線は全て建築の芯を出発点とし、それぞれの方向に放射状に広がっていて、そこに付帯させるように、4つの機能(玄関/キッチン/収納/水廻り)を配置した。全ての空間と機能を必要最低限の大きさで計画し、その頂点を一本の線で結ぶことで、この住宅の形はできている。物理的にはひとつの明確な外形を持ちながらも、敷地全体を不均質なワンルームとして一体的に利用できるのではないかと考えた。