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この企画は、福岡市中心部天神に立地する商業施設「IMS/イムズ」が、2004年から「九州ぐらし」として展開してきたものである。その第7回目となった今回、私たちに求められたのは、九州を拠点としている方々の仕事と日常を紹介するための本と会場をつくることであった。実際にそれぞれの仕事場を訪ねて仕事や日常のことについて話しを聞き、それぞれの考え方や価値観、ライフスタイルに触れる中で、「不特定多数の人が行き交う商業施設の空間で、自分が見聞きしたものをどうしたら『生(なま)』に近い形で伝えられるか」ということが最大の関心事となった。
私たちは、商業施設のアトリウムの中央に、紙で出来た建築を建てることにした。紹介する5人それぞれの展示スペースを、動線に対して並列に連結して配置し、それぞれの部屋にひとつずつ家型を設けてわかりやすい象徴性を与えた。商業施設のアトリウムのような開かれた場所では、美術館やギャラリーとは違い、買い物途中にいきなり展示に出会ってしまう。そのようなシチュエーションでは、しっかりと読み込むことで理解できる型ではなく、見た瞬間に伝わる型のほうが相応しいと考えた。それぞれの展示ブースをつなぐ開口部はなく、隣の展示に移るためには、一度展示ブースから出て、再度入り口をくぐらなければならない構成とした。「入口をくぐる」という行為が、次の展示へと思考を切り替えるきっかけになるのではないかと考えた。