期間限定の仮設的なショップとしてのデザインを求められた。
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Process
Text
「MINOTAUR」がつくる現代的な日常着の特徴は、徹底して機能的でありながらも、都会的な軽やかさを併せ持った「DETAIL(細部)」の解釈にある。今回のショップデザインでは、六本木ヒルズという施設の特徴を踏まえつつ、「屋外的であり、かつ、屋内的である(IN AND OUT DOOR)」ような背景であることを求められた。
設計を始めるにあたり、施設へ引渡し時の「床・壁・天井」の状態を確認したところ、店舗の床はコンクリートではなく、全面に樹脂製のOAフロア(プラスチックの薄い箱のようなもの)が敷設された状態で引渡しされることがわかった。しかも、共用通路との仕上げ高さの関係上、キッチリ「10mm」で平滑に床を仕上げなければならないことが条件だった。また、天井は(仕上げや照明も含めて)既設をそのまま活かすこと、壁面にも仕上げが施工できる箇所とそうでない箇所とがあり、そのような制約の中でデザインを考えることになった。
そこで、まず、床全面に4.0mmのMDF(木のチップを固めて成形した板材)を捨張りし、その上に、幅=店舗の間口を3等分(おおよそ1665mm)、奥行=450mm、厚さ=6.0mmのフレキシブルボード(セメントと補強繊維を原料に高圧プレスで成形した板材)を、目地幅=3.0mmの目地(目透かし)を設け、ブチル系の両面テープで圧着張りとした。そうすることで、店舗へ足を踏み入れたときの感触をコントロールしようとしている。また、全ての什器や壁面の大きさや配置は、この目地「3.0mm」と床材「幅1665mm×奥行450mm×厚さ6.0mm」という寸法を基準として決定されている。
ディスプレイ什器は可動とし、形状は床材1枚分(1665mm×450mm)で平面形状を決め、高さは床材2枚分(おおよそ900mm)とした。そうすることで、店舗のどこに什器を再設置しても「元からそこに什器が設置されることが決められていた」ように感じるように配慮した。フィッティングは、農業用鋼管(いわゆるビニルハウス)のジョイント部材を黒色のクリア塗装したもの利用して、直径22.0mmの同色のスチールパイプでフレームを製作し、それを屋外用のテント生地で覆ったものとした。ハンガーハイプは、フィッティングで使用したものと同色・同径のスチールパイプとし、ハンガーがかかる部分のみ丸鋼(無垢の鉄の棒)とした。そこに設置可能なT型をした専用金具を製作し、洋服だけでなく、バッグや靴などもディスプレイできるようにしている。
このショップデザインに使用した材料はとても少ない。その少ない材料の配列や細部に着目し、普段、街の中で見かけるものとは異なる状態として計画することで、MINOTAURなりの「屋外的であり、かつ、屋内的である」ようなインテリアが実現できるのではないかと考えた。