「ぶどうのたね」は、もともと呉服屋から始まった場所である。ご主人の生まれ育った家を改装し、時間をかけて耕すように育ててきた場所だ。訪れる人が心地よい時間を過ごせるように、服の店や器の店、レストランやカフェなどが少しずつ増えていった。
彼らの日常は早朝の掃除から始まる。豊かな自然や石垣の景観に囲まれた場所は、いつ訪れても「変わらない風景」としてそこにある。それは、何もせずに手に入れられるものではなく、日々の手入れを続けてこそ、生まれる風景だ。自分たちで手入れを重ね、続けてきた場所には、暮らしと仕事が分かちがたく混ざり合った風景がある。丘の上の神社へと続く坂道。その景色こそが、「ぶどうのたね」の背骨であると感じている。
この場所に関わり始めて、繰り返し話しているは、「馴染み」ということだった。馴染むとは、ただ新しいものをつくることではない。 すでにそこにある生活や風景に対して、大きな身振りで主張するのではなく、いったん受け止めることでもある。その上で、どのように新しさを忍ばせるのか。 自分たちの身の丈に合った新しさとは何か。その問いを持ち続けること自体が、「場に馴染む」ということに繋がるのかもしれない。
[写真クレジット]
1~21 ©fantasia