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クライアント夫婦が長年住んでいたマンションのリノベーションで、クライアント夫婦ふたりの終の住処ともいえる計画である。他の場所に移り住むよりも、ご近所付き合いや、通院している病院を変えることなく、今の自宅を改修して、ここに住み続けることを望んでいた。クライアントの要望は「リビング、ダイニング、寝室が一つあればよい」という非常にシンプルなもので、広さに比して少なかった。
部屋は最上階の一室。既存の住まいは天井高2,500mm程度だが、図面を確認してみると、天井裏に広大なスペースが存在しており、天井高の高い空間を利用できることが分かった。設計を進める上での手がかりを探していたため、その気積をいかした心地よさを目指すことにした。
天井高の高い室内には、もはや普通の戸建て住宅がすっぽりと入るのではないかと思えるほど、広く、プランを決定していくための手がかりが少なかった。そこで、内部を全て木造として、コンクリートの室内に、木造の建築をつくるように「建て方」を行うことにした。そうすることで、通し柱の位置や梁のサイズやピッチなど、様々な制約が出てきて、それを手掛かりに、新しい住まいを成立させるための設計を始めた。
また、目の前の建物の視線や周辺の雑踏から生活を守るため、窓周りのブラインドやカーテンは、閉められることが多いと予想されたため、わずかに入る自然光を住まいの奥まで導くことができるよう、形態や色、素材をデザインしている。