10年前に一室をリノベーションした物件であるが、都市部とリゾートエリアの狭間であり、駅からも少し離れていることから、たとえ立地の可能性を活かした計画をしたとしても、果たして人々に受け入れられるのか、その当時はクライアントも我々も半信半疑であった。しかしその後、東日本大震災が発生し、移住者も増え、そして世界全体が新型コロナウイルス大きな影響を受けることとなり、人々の価値観やくらし方が多様化し、中心地よりも低密度な場所の優位性も注目されつつある今に至っては、この場所の魅力が再発見されるのではないかと考えている。都市とリゾートの狭間、地面と水の狭間、海との狭間。色々な狭間にあるこの場所は、くらし手の気分次第で都会的にも、リゾート的にも感じることができるような抽象性を持っている。その抽象性を活かし、この場所だからこそ楽しめる日常を実現するリノベーションの在り方を考えている。
もともとこの物件は、約40㎡がメインの総戸数21戸の集合住宅であり、室見川に面してない部屋も存在している。40㎡の2つの部屋を80㎡の1つの部屋にすることで全室リバービューにし、リビングのソファに座りながら川を眺められるよう、バルコニーの手すり部分も全てガラスに代えるなど、ここで暮らす人々全てが存分に川を感じられるよう計画している。
福岡において『水辺』という立地を最大限活かした計画とすることで、街の多様性を引き上げる一助になるのではないかと考えている。2023年春完成予定。