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Photograph by Koichi Torimura

BAtoMA 2012

場と間 2012

「市場|MARKET」をテーマにした、インテリア商品の合同展示会の会場デザイン。市場や蚤の市で感じるワクワク感は、即興的にあり合わせの材料でつくったような店構えに依るところが大きいと考え、ビニルハウスの材料で仮設の市場を設計した。複雑な背景やつくりこみをしないことで、それぞれの出展者が自分なりのやり方で個性的な展示空間をつくることができる、「デザインしないことをデザインした」会場構成である。
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「市場」や「蚤の市」に行くと、とてもワクワクする。あの場所で感じる「楽しさ」や「美しさ」は、どこからやってくるのだろうか?
「市場」や「蚤の市」のように即興的に仕立てられたようにみえる場所も、よく見ると、それなりに必然性があるようだ。たとえば、ある広場で「蚤の市」や「マーケット」が開催されるとする。そこに出店(出展)する人たちは、どこか別の場所から提供したい「もの」を運んでくる。それなりの量を運んでこようとすると、その「輸送」や「移動」をどうするかが問題になる。できるだけ合理的に、少ない労力で運びたいと思うから、ある人は軽くて丈夫な木箱や段ボール箱に「もの」を詰め込んで来たり、ある人は台車にものを積んで来たりする。それを箱ごと(時には台車ごと)ディスプレイしてしまう。机なども、重くて頑丈なものよりも、軽くて組み立てが簡単な方が好まれる。また、それらの催し物は、街中のオープンスペースなどで開催されることが多いため、不意な天候の変化にも対応する必要がある。そうすると、ハッチバック式のワゴン車などで広場に乗り付けて、「もの」が詰め込まれた車内をそのままお店とする人がいたり(その跳ね上げた扉が屋根や庇代わりになっていたり)、ありあわせの材料で簡易なテント屋根をつくっている人がいたりする。

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このような場合、基本的には、「ものを提供したい人=その場所を設える人」であるため、「できるだけ最小限の時間とコスト、労力でできた方がよい。」という判断基準になることが多いようだ。そこにいる誰もが「美しくあること=優先順位 第1位」には、決してならないワケで。そこでは、自分が提供したいと思うものを「手に入れたい」と望む人と出会うことが大切であり、その結果として、そこに(ものともの、ものと貨幣の)交換が生まれる。そこには、とても複雑で大きな思惑は、ほとんど存在しない(ように見える)。あるのは、「ものを提供したい人」と、その人が持って来た「もの」、それを「手に入れたい人」、それと、それぞれが、最小限の手間と労力と時間でつくった即興的で簡易な設えのみである。そして、そこで生まれたやりとりの中で交換されているのは、決して「もの」と「貨幣」だけではなく、みんなそれ以上の、貨幣だけでは計ることができないものを交換しているのだと思う。だから楽しいし、美しい。つくることが専門ではない人たちが考えた簡易な設え、その軽快なディティールの集積が、その感情を補強してくれている(ように感じる)。逆説的になるけれど、こういう状況は、「美しくあること」を目指して出来上がったものではないから、美しい。他の目的を果たそうとして、それぞれが、それぞれのやり方で自分の居場所をつくり、そうしてでき上がった「色やカタチ」の集積が、「結果として」美しい風景をつくっている。

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もし自分たちがそのような「背景」をデザインするならば、そうありたいと思う。つまり、「それぞれが自分で居場所をつくることができる」その状況を、そっと裏支えする。「設計者」の手の痕跡や意図は、見えない方がいい。それぞれが、それぞれのやり方で自分の居場所をつくり、そうしてでき上がった「色やカタチ」の集積が、「結果として」美しい風景をつくっている。それが理想ではないかと思っている。

Text

 市場や蚤の市に行くとワクワクする。あの場所で感じる楽しさや美しさは、どこからやってくるのだろうか?

 即興的につくられたように見える場所にも、よく見ると、それなりに必然性があるようだ。たとえば、ある広場で蚤の市やマーケットが開催されるとする。そこに出店する人たちは、どこか別の場所から提供したいものを運んでくる。それなりの量を運んでこようとすると、輸送や移動をどうするかが問題になる。できるだけ合理的に、少ない労力で運びたいと思うから、ある人は軽くて丈夫な木箱や段ボール箱に詰め込んで来たり、ある人は台車に乗せてきたりする。それを箱ごと(時には台車ごと)ディスプレイするため、展示台は重くて頑丈なものより軽くて組み立てが簡単な方が好まれる。また、それらの催し物は、街中のオープンスペースなどで開催されることが多いため、不意な天候の変化にも対応する必要がある。そうすると、ハッチバック式のワゴン車などで広場に乗り付けて、車内をそのままお店とする人がいたり(その跳ね上げた扉が屋根や庇代わりになっていたり)、ありあわせの材料で簡易なテント屋根をつくっている人がいたりする。
このような場合、基本的には「ものを提供したい人=その場所を設える人」であるため、「時間・コスト・労力は最小限にしたい」という判断基準になり、「美しくあること=優先順位 第1位」にはならない。そこで一番大切なのは、自分が提供するものを手に入れたいと望む人と出会うことであり、その結果として(ものと貨幣、あるいは、ものとものの)交換が生まれることである。いたってシンプルな構造なのである。逆説的になるが、こういう状況は、美しくあることを目指して出来上がったものではないから、美しいのである。それぞれの店主たちが、それぞれのやり方で自由に自分の商品を展示する。そうしてでき上がった色やかたちの集積が、結果として美しい風景をつくるのである。

 そのような「結果として作られる美しさ」を表現したいと考え、今回の「BA to MA」の会場構成では、ビニルハウスの材料で仮設の市場を設計した。複雑な背景やつくりこみをしないことで、それぞれの出展者が自分なりのやり方で個性的な展示空間をつくることができる、「デザインしないことをデザインした」会場構成である。

Photograph by Koichi Torimura

物件詳細

  • タイトル / 場と間 2012
  • 計画地 /

    ラフォーレミュージアム原宿

  • 用途 / 展示会場
  • 状態 / 終了
  • 計画種別 / エキシビジョン
  • 工事竣工 / 2012年10月
  • 計画面積 /

    523.00m2

  • 発注者 /

    アッシュ・ペー・フランス 株式会社

  • 設計 /

    rhythmdesign Ltd.

  • 担当者 /

    井手・木内

  • プロデュース /

    BA to MA

  • アートディレクション /

    池田充宏[DRAWER]

  • 照明ディレクション /

    株式会社 ウシオスペックス福岡

  • インスタレーション /

    Nathalie Lété
    矢島沙夜子[klola co.,ltd.]
    hoilday
    竹内俊太郎
    ANTIQUE WORRIORS

  • 施工会社 /

    ヒリュー装美 福岡支店

  • 協力 /

    佐藤産業

  • 写真撮影 /

    鳥村 鋼一

  • Project Details /

                 
    Title: BA to MA 2012 [#003]
    Location: LAFORET MUSEUM HARAJUKU
    Type of Project: Exhibition
    Status: COMPLETED
    Site area: 523.00m2
    Commissioned: June 2012
    Completed:October 2012
    Client:H.P.FRANCE S.A.
    Budget: Confidential

  • CREDIT /

               
    Architects: rhythmdesign
    Project Architect: Kenichiro Ide
    Design Team: Kenichiro Ide, Yuta Kinai
    Produce: BA to MA
    Artdirection:Mitsuhiro Ikeda [DRAWER]
    Lightingdirection:USHIO SPAX FUKUOKA
    Instalation:
    Nathalie Lété
    Sayoko Yajima[klola co.,ltd.]
    hoilday
    Shuntaro Takeuchi
    Cooperator: SATOH SANGYO Co.,Ltd
    contractor: HIRYU SOUBI Co.,Ltd.
    photograph: Koichi Torimura

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