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福岡市博多区にある鉄筋コンクリート造地上6階建て集合住宅のリノベート計画。コンクリートの構造躯体以外の仕上げ・設備などは全て一度撤去され、構造的な補強が施されつつ、内外装、電気や給排水に関わる設備、内部のプランニングは完全にリニューアルされている。
コンクリートが建築物の構造体としての強度を有しているかの調査を実施した結果、建設当初の設計基準強度を上回っており、躯体の中性化や塩化物量なども許容範囲内であること、また、耐震診断の結果、RC造の耐力壁と鉄骨のブレースをバランスよく配置することで、室内の居住性を損なうこと無く構造的な強度を確保できることが判明。耐震性能を高めるために建物を軽量化することでプランの自由を高めることに繋がることもわかった。
集合住宅を100年以上の長期的なスパンで利用を想定する場合、躯体の強度を確保することと同様に、設備的なメンテナンス性を確保することが非常に大切になる。構造体自身は適正に外壁仕上げや防水を保守し、躯体を雨水の侵入から守れば、かなりの時間的スパンで強度を確保することが出来る。しかし、給水管や配水管などの設備配管などは、劣化や社会的なニーズへの対応のため、一般的に20〜25年に一度のペースで何らかの大規模な改修が必要になると言われており、設計段階でどのような設備計画を行っていたかが建物の寿命を大きく左右する。幸いこの既存建築物は、各階の共用廊下の幅員が通常よりも広く確保されていたため、電気・給排水設備の縦系統配管を全て共用廊下側へ集約。これにより、完成した建築物は、外部足場などの設置せずに、容易に設備のメンテナンスができるようになっている。
セキュリティーや駐車場不足などの改善事項があるものの、主要交通拠点へ近く、建物の北側に大きな公園があるという、生活の場として、仕事の場としての魅力的な環境を活かすことに重点を置いたプランニングとした。住戸プランは既存のものと大きく変更し、住宅の共用部(リビング・ダイニング・キッチンなど)を南側(外気に面した位置)に配置。北側に公園がある立地条件を活かし、全ての住戸でペットとともに暮らすことができるようになっている。また、住居以外の利用も想定したゾーニングになっていることも、この計画の特徴である。