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福岡を拠点とする老舗企業が運営するドラッグストアのリニューアルプロジェクトである。このドラッグストアが位置するのは、九州最大の繁華街天神の地下を南北に貫く全長約590mの地下街。19世紀のヨーロッパの街並みをイメージし、石畳やレンガタイルの床、唐草模様の天井、ガス燈風街路灯、鉄製の店名看板などが使用されており、落ち着いた雰囲気を演出している。地下鉄天神駅・天神南駅と直結し、西鉄福岡(天神)駅や西鉄天神バスセンターにも通じているためアクセスも良く、ファッション、グルメ、書店、雑貨店など、150余りのテナントがある。
この計画は、クライアント企業のフラッグシップ店として45年間営業してきた店舗の初のリニューアルである。店舗面積は約30坪から約41坪に、また、品揃えも1.5倍に拡張させる。通常、商業施設の店舗デザインを考える場合、ブランド独自のVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を優先するが、私たちはクライアントとともに導き出した、「天神地下街という立地だからこそ可能なインテリア」を実現させるため、地下街の街並みらしさをインテリアにも引き込むことを優先することにした。
カラーリングは、天神地下街の床のレンガタイルの色に馴染むメインカラー1色を決め、それを基にしたグラデーションカラーで構成。メインカラーはレンガタイルの色を基に、彩度と明度をコントロールしながら決定し、地下街の街並みに馴染むような色を内部に展開させた。また、天井には、地下街のヘリンボーンの床の斜めのラインに合わせて、LEDのライン照明を配置している。これらの計画が、地下街と店舗の境界が明確に切り替わることなく雰囲気の連続性を作り、3方向からの視認性を高め、イメージの統一に繋がっている。
店内照明には3000ケルビンの色温度のLEDを採用。天神地下街には、地下街全体のほの暗い雰囲気を保つために、蛍光灯のような明るく白い光が通路にじみ出てはいけないという厳しいレギュレーションがある。ドラッグストアという性格上、ぱっと目を引く必要があるが、廻りの店舗よりも高照度にしながらもレギュレーションに沿った、高すぎず、低すぎない照度を探っている。
立地は人通りが多く、交差する場所である。以前の店舗の角地には、商品が並ぶ棚が設置されていたが、商品の集積があるよりも、街角に象徴性ができると考え、今回の計画では、メインカラーで作られたサインのみを設置することにした。商品が露出しない場所を街角につくることは、店が始まる意思表示であり、待ち合わせ場所にもなり得る。全体の調和のさせ方の一つであると考えた。