


この展覧会「With Others」は、リズムデザインの2004年から2024年までの20年間の歩みを総覧し、それを新たな対話の契機として共有する試みです。会場は、夏に東京・神楽坂の「BOOTLEG GALLERY」、秋に福岡・太宰府の「太宰府天満宮 文書館」とし、巡回形式で開催しました。
私たちが考えるデザインとは、寛容な眼差しを持った働きです。自分も含めた他者から出発し他者を目的地とする、姿勢でありプロセスです。その他者とは発注者や利用者であり、すべての生活者であり、歴史的文脈であり、地域文化、風習、地形、場の痕跡でもあります。
本展の開催にあたって、この20年間で大切にしてきたことを改めて言葉にし、それらを相互に関わり合う27のデザイン文脈で編集し、会場に構成しました。数百点に及ぶ展示物はすべて、これまでのプロセスの中で生まれたものばかり、新たに製作したものはひとつもありません。また、完成写真や完成模型といった「成果物」にあたるものはほとんどなく、代わりに、検討の過程で用いた対話模型やスタディ模型、素材サンプル、いただいた手紙や書籍など、他者との間で交わされた対話や体験の断片たちを公開展示しました。
About title / With Others
「With Others」とは、「For Myself」の対義語として導き出した言葉です。他のだれかといっしょに。デザイン行為には常に他者が含まれますが、自分を含む他者と積極的に関わり合う働きとしてデザインを捉えたい。その姿勢を「With Others」という言葉に込めました。
建築家やデザイナーの展覧会や作品解説にはよくコンセプトが添えられています。創作とともに語られるコンセプトはたいてい、その創作を高次に位置付ける効果を期待されているようです。ここに大きな違和感があります。デザインという働きを語るとき、カッコ書きにまとめて自らに引き寄せるのではなく、他者に可能性を開いていく姿勢でありたいと思います。「With Others」という言葉がそのように響けば幸いです。
この展示は、私たちと他者との対話の履歴でもあります。対話とは、観察し共有し合う双方向の働きです。プロジェクトに関わる全ての生活者と「目線を合わせる」ことです。プロジェクトに関わらない遠くの生活者と目配せを交わすことです。
創作は対話であり、次の創作のためのきっかけである。そのようにして人々の働きは共有され、たくさんの文脈が巡っていく。人間の住まいや建築の歴史から見れば、デザインもコンセプトも圧倒的に歴史が浅く、後発的なものです。そうしたことよりも、自分たちの費やすエネルギーがどのような働きになるのかを考えていきたいと思います。
Scenes of Dialogue














[東京展]
会期|2024年8月1日(木)~ 8月11日(日)
会場|BOOTLEG Gallery[東京都新宿区改代町40_1F]
開館時間|11:00~18:00(休館日なし)
[福岡展]
会期|2024年10月31日(木)~ 11月10日(日)
会場|太宰府天満宮 文書館[福岡県太宰府市宰府4丁目7-1]
開館時間|10:00~17:00(休館日なし)
[写真クレジット]
スライダー ©OOKI JINGU
7~9©FANTASIA
12©︎daichi_chohara
1~6,10,11,13~17 ©︎rhythmdesign