The first day of them
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熊本市内にある認可保育園の、園舎老朽化と定員増に伴う建て替え計画。国道から一本入った住宅街にある、築40年を超える平屋の既存園舎を解体し、新たに地下1階+地上2階建ての園舎を設計した。県から要請があったのは定員を60名から90名へ、30名増やすというもの。保育上必要とされる面積に対して非常に限られた敷地面積であったことから、保育面積と定員に見合った駐車台数の確保がまず課題となった。そこで敷地の特徴でもあった前面道路との高低差を利用し、道路と同レベルを地下駐車場として掘り込み、その上を保育の中心となるレベルとして土地を再整備している。これによって保育面積として有効なスペースを確保すると共に、送迎時の車動線と保育上の動線とを明快に分けることが可能になった。
設計をはじめるにあたりクライアントから「”小さな施設”ではなく、”大きな家”を」という要望があった。それは彼らの保育方針でもあり、保育園として何か特別な空間を用意するのではなく、園児の「日常」の延長線上にある暮らし(食べる、寝る、遊ぶ)をそのまま受け入れられるような空間を求められた。それは何か、「ひとつのコンセプトで貫かれた明快さ」を求める、というよりも、「いろいろな部分やそれぞれの活動の集積として全体がある」ようなイメージである。「どこで、何をする?」を決めるのは、ひとりひとりの園児、である。このことを踏まえ、園庭を「大きなひとつながりの外部」としてつくるのではなく、ロの字型の平面形状をした建物のボリュームによって、小さな中庭と南側の園庭へと、それぞれ違った特徴をもつ場に分けるようにした。
また二層の保育園においては、園児の避難能力の問題から未満児室を1階に、3歳児以上の保育室を2階へ配置する園も多い。しかし今回は3歳児以上の保育室を1階へ、未満児室を2階に配置することで、グラウンドレベルでの活動が中庭、保育室、園庭へと連続して活発になることを目指した。一方で2階にはテラスを設け、日常的には未満児がある程度区画された外部で遊べる場所として、避難時はこのテラスを一時的な避難場所となるよう計画している。そして建物は片流れと寄せ棟とを連結させた傾斜屋根とし、同じ室内でも各室で全く性質の異なる空間となるよう配慮した。