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Photograph by Shinde Kazuma

KYOYA YAKUIN bld.

KYOYA薬院ビル

企業の創業80周年記念事業の一環として進められた、テナント・オフィス・住戸から成る、複合用途建物のリノベーション計画。年月を重ねた既存の建物の雰囲気を残しながら、新しいイメージはひっそり忍ばせる程度に抑えることが重要だと考え、外壁は何もデザインせず、徹底的に内部のデザインに徹した。耐震補強を施し、手入れを繰り返しながら半永続的に利用可能な仕様が仕上げを採用することで、少なくとも今後30年以上は利用可能な建築を実現した。

Text

 大規模なリノベートを計画するほとんどの場合がそうであるように、この計画も「新築か、リノベートか」というところから議論が出発したが、私たちプロジェクトチームの共通認識として、この建物は残すべきであるという意識が強くあった。それは、年月を重ねた既存の建物が良い雰囲気をもっていたという直感的な判断に加え、天神・大名・今泉などの福岡市中心地区に徒歩圏内であるという、立地条件の良さがあったためである。新築しなくとも、既存の建物に新しいイメージを忍ばせるだけで事業として成立する可能性は十分にあると判断した。

 リノベートを選択する大きな利点として、「初期投資を抑えることが出来る」ということが挙げられるが、その反面、「新築並みの賃料設定は難しい」という一般常識が存在する。私たちは、クライアントから求められた「新築同等以上の賃料設定と利回り」を実現するために、建物の表面的なデザイン以上に、内部のゾーニングについての議論に多くの時間を費やした。周辺環境の様々な要素を徹底的にリサーチし、最終的に、1階がテナントスペースと貸事務所スペース、2・3階がクライアントの本社事務所、4階が賃貸事務所、5~7階が賃貸住戸(小規模な事務所としての利用も可能)とした。

 また、既存躯体コンクリートの圧縮強度試験(コンクリートの強さを測定する試験)の結果を基に耐震補強計画を進めていたが、想定よりもコンクリートの強度が低かったこともあり、現行の基準(耐震改修法などの)を満たすためには、1~5階までにそれに応じた耐震補強を施す必要があることがわかっていたため、約50㎡×3住戸だったところを、約75㎡×2住戸とすることでこの問題を解決した。結果として、それまでには無かった広い区画をつくり、この計画を魅力的なものとすることにも繋がった。

 それぞれの部屋のプラン(間取り)は、必要最小限の間仕切りやしつらえのみを用意することを前提としており、そのスペースをどのように使うかの選択権は、基本的には入居者それぞれの想像力に委ねられている。かといって、倉庫のような何もない空間をつくるということではなく、その利用を想像させるだけの僅かなしつらえは忍ばせたいと考えた。この計画では、悪くなったら新しいものに取り替えられるようなものではなく、入居者の方々自身で手入れが可能な(入居者の方々にはメンテナンス方法等が記されたしおりが渡されている)、手入れを繰り返しながら半永続的に利用可能なものを使用している。それは、創業してからこれまでの80年間、商空間を通して一般消費者の生活や価値観を先導することを目指してきたクライアントから示された、「企業理念を十分に反映した計画とすること」という前提条件に対する、私たちなりの一つの回答である。既存の価値観に基づいたものではなく、これからの時代の新しい価値観を育てていく契機となるような状況を目指すことが、これからのクライアントが目指す価値観として相応しいのではないかと考えた。
                                         
                                              
                                                
      
                                         
                                               
                                             
                                              
                                              
                                                
      

Photograph by Shinde Kazuma

物件詳細

  • タイトル / KYOYA薬院ビル
  • 計画地 /

    福岡市中央区薬院

  • 用途 / 1階/テナントスペース、2・3階/(株)京屋 本社事務所、4~7階/賃貸住戸
  • 状態 / 竣工
  • 計画種別 / リノベート
  • 構造 / 鉄骨鉄筋コンクリート+鉄筋コンクリート造 ※耐震補強を行っています。
  • 規模 / 地上7階
  • 敷地面積 / 562.53m2
  • 建築面積 / 493.90m2
  • 法定延床面積 / 2546.71m2
  • 計画着手 / 2007年3月
  • 工事竣工 / 2008年12月
  • 発注者 /

    株式会社 京屋

  • 設計 /

    rhythmdesign Ltd.

  • 担当者 /

    井手・寒竹

  • 構造設計 /

    野口豊高建築構造設計

  • 電気設備設計 /

    大幸設備設計事務所

  • 機械設備設計 /

    石川設備設計

  • 照明計画 /

    株式会社 ウシオスペックス福岡

  • 施工会社 /

    シミズビルライフケア九州

  • プロデュース /

    吉原住宅有限会社

  • プロモーション /

    ひかり生活デザイン

  • サイン計画 /

    山田 貴史

  • Project Details /

                 
    Title: KYOYA YAKUIN bld.
    Location: Yakuin, Chuo ward, Fukuoka, Fukuoka pref., JAPAN
    Type of Project: 1st FL/Space on lease, 2nd&3rd FL/Kyoya corporation Office, 4th~7th FL/Apartment on lease
    Status: completed
    Structure: Steel+Reinforced Concrete, Anti-eathquake Reinforcement
    Site area: 562.53m2
    Building area: 493.90 m2
    Gross internal floor area: 2546.71 m2
    Commissioned: March 2007
    Completed: December 2008
    Client: Kyoya corporation
    Budget: Confidential

  • CREDIT /

                    
    Architects: rhythmdesign
    Project Architect: Kenichiro Ide
    Design Team: Kenichiro Ide, Kantake
    Lighting consultant: USHIO SPAX FUKUOKA
    Structural Engineers: Noguchi Toyotaka Structural Engineers
    Electrical Facilities Planning: Taiko Setsubi Sekkei corporation
    Machine Facilities Planning: Ishikawa Setsubi corporation
    Main contractor: Shimizu Building Life Care corporation
    Producer: Yoshiwara Jutaku corporation
    Promotion: Hikari Seikatsu Design
    Sign Planning: Takafumi Yamada

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