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元旅館だった建物の上階に位置する集合住宅のリノベーション計画である。この建物が立地する地区は、数十年まではとても賑わっていたようだが、いまでは集合住宅が立ち並ぶ、閑静なエリアとなっている。東側が那珂川に面しており、この建物の大きな魅力のひとつである。
クライアントは先代からこの建物を引き継ぎ、若者のための街の新たな拠点となることを構想したいと考えていた。元々旅館だった部分は、テナントスペースへとコンバージョンされ、この「清川」というエリアが再考される契機となった。その集合住宅部分をリノベートすることになったのだが、リノベーション後にできるだけ安価な賃料で提供できるように、また、できるだけの暮らしの自由度を内包できるよう、既存のプランを活かしつつ、消去することが構築性を帯びるような、解体のあり方を考えた。
「住居」を想定して計画したものの、ほとんどのスペースには、事務所やアトリエとして利用する若者が入居することになった。古きを活かすリノベーションでしか実現できない計画の在り方についての気づきを得た、私たちにとって、とても重要な始まりのプロジェクトである。