「風景とともに暮らす家」を目指し、宙に浮かんだ状態で、南側の川やその向こう側の田園風景に対して開かれた住宅を考えた。
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計画地は大変恵まれた環境の中にあり、周辺には日常生活と生活の余暇を楽しむための様々な場所や状況が用意されていた。初めて敷地を訪れたとき、クライアントがこの環境に魅了されてこの場所を購入したことに共感を覚えた。それと同時に「この風景を壊さずに、家をつくることは出来ないだろうか。風景とともに暮らすとはどういうことだろうか」ということを考えた。家をつくることには、生活の器として快適な内部をつくるということと、新しい風景の一部をつくるという、大きく二つの意味がある。そこに快適な生活を楽しむための家をつくることが、その家が建つまち並みまでも美しく引き立てる、そんなつくり方を目指したいと考えた。
この宙に浮かぶ家は、南側の川やその向こう側の田園風景に対して開かれている。浮き輪のように中心が空洞であり、そこが室内へのアプローチであると同時に、光や風・音などが出入りするための空間となっている。生活の場所が周辺の地盤より3.0〜4.0メートルほど上がったところになるため、遊歩道からの視線を気にせずに、自分たちだけの景色を手に入れることができ、家自体がひとつの大きな屋根となり、家と同じ大きさの半屋外空間をつくることが出来る。建築の下は駐車場だが、余暇を楽しむための場所でもあり、様々な用途に利用することが出来る場所でもある。また、こうすることで、快適な内外の環境を確保しながら、人や視線・風・音の通り道を確保したいと考えた。