Interior

Loop a Bread


tōn

鮨ひら乃

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敷地は, 天満宮へと続く参道に直行する「小鳥居小路(ことりいしょうじ)」に面した奥行30mほどの細長い旗竿敷地である. 江戸時代の古地図を読み解いていくと, 当時この辺りには代官屋敷(御造営奉行所) があったようだ. その大きな土地は, 時代の変遷と共に短冊状に分割され, 現在のような間口が狭く奥に長い区画が連なる風景が形成された. 30年ほど前まではスーパーマーケットや駄菓子屋などがあり, 地域の人びとでにぎわう通りだったが,高齢化などによる住民の世代交代などが進むにつれ, 古い建物は解体され虫食い状に駐車場が増えた. この敷地も同様に, 数年前から駐車場として利用されていた. 近年, 再び小鳥居小路に地元出身者による店舗が集まってきており, 参道の線状の賑わいを面へと拡大させるようプロジェクトが始まった.
計画に着手するにあたり情報を集めると, 「ベーカリー」や「ゆっくりと食事ができるカフェ」, 「鮨屋」などの食事処が欲しいなど, 地域の潜在的なニーズがわかった. クライアントからすでに地域に根ざしているギャラリーへの自然採光をできるだけ妨げないこと, 近隣居住者の住環境や街並みに配慮すること,出店者と熟議を尽くし, その意向を反映した建築を設計して欲しいとの要望があり,また,すべてのテナント出店者からインテリアデザインの依頼を受け, 建築と3つのインテリアが落ち着いた時間を過ごす場であるという前提を共有しつつ, それぞれの店舗が没個性化せず、 店舗特有の空気感が感じられるようなデザインをコーポラティブ方式で設計することになった. この要望が, 建築そのものへの利己的なものではなく, 利他的な街並みへの配慮であったことが, この建築のあり方を大きく方向付けている.
太宰府天満宮周辺は, 古都の風情と都市の風景が調和した良好な景観形成を目指し「景観条例」が定められている. 「街から見える範囲は軒を設けた勾配屋根とすること/建築の色彩制限/緑地率」などが細やかに規定されているが, 敷地の南側にあるカフェと北側にあるギャラリーは条例施行前の建築であり, 正面から見ると軒の出がない四角い建築である. それに起因するのか, この敷地周辺はどことなく, 周辺の街並みとは少し違った雰囲気がある.ここに建築が建つことで, 門前町の歴史的な雰囲気と, 少し現代的に感じられる敷地周辺の雰囲気を馴染ませることができないだろうか, この建築がそのどちらのよさをも惹き立てていくことができないだろうか, と考えた.建築形態(型)は景観条例を満たす街のルールを踏襲しつつ, 建築詳細(色・形)は少し抽象度を上げ, このエリアの歴史的かつ現代的な街並みの調整を試みている.