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上棟手順検討模型



























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福岡県民の憩いの場として愛される「福岡県営 大濠公園」。公園は多くのランナーや散歩をする地域の人びと、観光客などの来街者で、日々賑わっている。「大濠テラス〜八女茶と日本庭園と。」は、大濠公園内の南側、日本庭園に近接して建つ 2 階建ての木造建築で、Park-PFI 制度(都市公園の魅力向上と活性化を図るために、公園の整備を行う民間の事業者を公募し選定する制度)による公募によって選定された、公民連携による休養施設(飲食施設)である。プロポーザルでは、日本庭園の認知・回遊性の向上に加え、福岡県の特産品のひとつでもある「八女茶」の情報を発信することなどが求められた。
公園内に設定された敷地の眼前には、順光によって照らされた美しい公園の景色が広がっている。その豊かな自然環境の邪魔にならないような建築、また、隣接する日本庭園と親和性の高い建築を目指し、公園にそっと屋根をかけたような、それ自体が主張をしないような建築設計を心がけた。また、ただ単純に「和風」の意匠で建築を構成するのではなく、「世界的に普及している最先端の木材加工テクノロジー(CNC木材加工機などの技術)」と「日本に古くから伝わる伝統的な木造技術(ほぞや込栓による金物を使用しない仕口など)」を掛け合わせることで、新たな木造建築の可能性を示したいと考えた。
この計画では、CLT(ひき板を並べた層を、板の繊維方向が層ごとに直交するように重ねて接着した大判のパネル)を用いた木材のみの剛接合部材を開発し、電動工具を使用せずとも木槌さえあれば誰もが自分の力で組み立て可能な構造体を実現した。建設のプロセスが開示されず、いつの間にか公共空間に建築が建ってしまうのではなく、建物が立ち上がる過程から地域と関わりが持てるような、地域の人たちが「自分たちの居場所を、自分たちでつくる」ことができるような状況を実現するための一助となればと考えた。
CLT と製材、それぞれの利点を活かし組み合わせて実現した建築は、景観に対して開かれた、簡素かつ開放的な建築となっている。園路に面した窓は、1 階は 約 11m、2 階は 5.5m の幅で開放することができ、開け放つともはや屋外にいるような感覚になる。また、軒先には雨樋を設けず、滴り落ちる雨の風情を感じることができるように計画した。
建築完成後数ヶ月が経ち、施設は多くの人で賑わい、福岡の新しい観光名所となりつつある。