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福岡市中心市街地より車で1時間ほどの住宅地。土地探しから一緒にはじめたクライアントが見つけてき敷地は、幅3.0M×長さ30.0Mの引込み道路の先に100坪程の三角形の土地が接続した、矢印のような場所だった。初めてその敷地に訪れたとき、この変わった形状の土地に大勢の人がいることがとても珍しかったのか、近隣に住む方々がたくさん出てきて、この地域には悪い人がいないこと、ごく稀に訪れる豪雨によって前面道路が冠水することがあること、そのため、この辺りの住宅は前面道路よりも60cmほど上がった土地に建築されていることなど、この地域の人間関係から建築の作法まで、たくさんのことを教えてくれた。
「リビングは必要ない」というクライアントの家族にとって、「食卓が家族の中心」であり、また、「それぞれの気配を感じながらバラバラに時間を過ごすことが日常」であった。家族がそれぞれの「居場所」で活動しながらも、いつでも互いの気配を感じることができるよう、様々な居室がダイニングを囲むような計画を考えた。
通常はまず建築全体の形状を決定し、その中でダイニングや居室の位置を決めていくが、この住宅では、敷地の形状と周囲の街並みとの関係性を考え、はじめに開口部の方向を考えて配置した居室をそれぞれ棟のように建て、その隙間にできた空間をダイニングにするという手法を採用。この敷地が面する近隣に等しく向かい合い、住宅の全ての居室からダイニングを望むことができる状態で完成させた。