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Photograph by Koichi Torimura

House in Tomigusuku

豊見城の住宅

沖縄の戦前戦後に主流になったそれぞれの建築様式と、今も残る伝統や様式を現代的に解釈し融合させることで、現代の技術で実現可能な沖縄の都市型住宅を目指した。高温多湿であることや猛烈な台風など、この土地ならではの強烈な気候特性に耐えながらも、暮らす人自身がその時の気象条件や時間などに応じて、自分の手で快適な環境を作ることができる住宅がこの風土には相応しいと考え、設計した。

Process

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この住宅では、熱容量の大きなコンクリート躯体の外側に断熱層を、内側に空気層を設けている。さらに、家族の日常の居場所となる2階部分は、構造的・経済的に適正な範囲で最大限の天井高さを設け、3階の寝室も大きなワンルームとした。室内にできる限り連息的で大きな気積を確保することで、局所的な室内環境の変化を軽減・緩和しようと考えた。

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沖縄県豊見城市で進めている「豊見城の住宅」、ようやく確認申請と工事契約が完了し、無事に地鎮祭を執り行うことができた。当日、お施主さんのご家族と一緒に出席された奥様のご両親が、「着工を首を長くして待っていましたよ!」と、半分冗談で(顔は真顔で、汗)、声をかけて下さった。この住宅の敷地とご両親のご自宅の距離が近いため、新居が完成したら実現できるであろう生活の在り方を、本当に楽しみにされているようであった。

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豊見城の現場では、今月始めに鉄筋コンクリートの躯体工事が完了した。昨年の9月に着工してから、まずは杭工事を行い、基礎工事、躯体工事の順に工事を進めてきた。この住宅は地上3階建てなのですが、鉄筋コンクリート・鉄骨・木造の混構造でつくっている。外気に面した部分を鉄筋コンクリートでつくり、上からの荷重のみを支える部分には鉄骨を、室内の肌に近い部分を木造でつくっている。今月初めに3階から屋上にかけての最後のコンクリート打設。今月初めに3階から屋上にかけての最後のコンクリート打設前の配筋検査を行い、その翌日に無事にコンクリートを打設した。2階には志保工がたくさん。

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工事に着工する前からずっと、外壁の色と質感(肌理)の検討を続けている。沖縄の最もポピュラーな、現代的な外壁仕上げは塗装。つまり、何かを「塗る」ということである。戦後に定着したものだが、白っぽく塗装を施されたコンクリートの四角い建物が、現在の沖縄の都市部の風景をつくっている。

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ようやく屋根スラブを支えていた支保工が解体され、建物の内部を体感できるようになってきた。豊見城の住宅は、8.0M角の正方形の平面形状をした3階建ての建物なのだが、3階床レベルには写真のようなRC梁のみが十字に入り、それを平面の中央で60mm角の鉄骨柱(無垢材)が支えている。2階の床スラブから屋根スラブの下まで、高さが6.0M程。内部は出来る限り木造でつくりたいと思い、これをベースに木の梁を架け渡して木造で床をつくることにした。繊細な仕口(材料同士の接合部)では加工や施工が大変でコストもかかるため、現地の型枠大工さんでも加工可能な簡単なディティール(RC梁と木造梁の接合部のところの)を、構造の黒岩さんと一緒に考えた。サッシの取り付けも完了して、内装工事が始まっている。

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この住宅では、日常の家族の居場所となるリビングは、構造・コスト面で適正な範囲内で、最大の天井高さを確保している。また、最上階に設けた家族の寝室は、間仕切りなどなく、大きなワンルームとした。沖縄のような高温多湿の地域では、局所的な室内温度の上昇による不快感を避けるために、できるだけ大きな気積(室内の空気量)確保することが有効な場合がある。外周に連続して設けた幅800mm×高さ1500mmの開口部を少し開けるだけで、とても心地よく室内の空気が動く。

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これまでの資料をいろいろとまとめていたら、この住宅の計画をはじめて2回目のリアリングの際に、お施主さんの旦那さんが持ってきてくれた資料が出てきた。この資料、旦那さんが「家族の寝る場所」をまとめたチャートである。この住宅ができて家族で暮らし始めたときに、みんながどこで眠るのか、そこには、将来的に増えるでろうお子さんの欄もちゃんとあった。5年後、10年後、20年後と、年を重ねるごとに変わるであろう生活のスタイルも想定されていて、とても詳細にまとめられていた。

Text

 沖縄県の都市部に計画した、混構造3階建ての住宅。外気に面した部分は鉄筋コンクリートで、人の肌に近い内部は木造を主体としている。沖縄のように高温多湿な地域では、強烈な気候特性に耐えながらも、暮らす人自身がその時の気象条件や時間などに応じて、自分の手で快適な環境を作ることができる、そんな状態が相応しいのではないかと考えた。
  
 この住宅では、熱容量の大きなコンクリート躯体の外側に断熱層を、内側に空気層を設けている。家族の日常の居場所となる2階部分は、構造的・経済的に適正な範囲で最大限の天井高さを設け、3階の寝室も大きなワンルームとした。室内にできる限り連続的で大きな気積を確保することで、局所的な室内環境の変化を軽減・緩和しようと考えたからである。外壁には子供でも開閉できる大きさの開口部を一定の間隔で設けた。一つ一つの開口部を小さくすることで台風の被害を受けにくくし、風向きによって開ける窓を変えることで、心地よい通風を実現する。また、建築が沖縄の風景に馴染むよう、外壁に塗ったペンキの色には、石灰岩の色を解析・カラーチャート化し、その中から選択したものを採用した。
  
 沖縄で暮らす人びとは、地域特有の多様な気候条件から身を守り快適な生活を営むために、まちや住宅にいろいろな設えを考えてきた。路地からの視線を遮りながらも緩やかにつなぐ「屏風/ヒンプン」や、「雨端/あまはじ」のような大きな軒下空間など、伝統的な町並みや木造住宅の残る形や様式から、現在でも過去の知恵を知ることができる。そのような地域に残っている伝統や様式、文化を参照し、それを現代的に解釈することで、強烈な日差しや熱を遮り、風雨に耐えながら、できるだけ多くの時間や体験を家族と共有できる家づくりを目指した。

Photograph by Koichi Torimura

物件詳細

  • タイトル / 豊見城の住宅
  • 計画地 /

    沖縄県豊見城市

  • 用途 / 専用住宅
  • 状態 / 竣工
  • 計画種別 / 新築
  • 構造 / RC造
  • 規模 / 地上3階
  • 敷地面積 / 166.00m2
  • 建築面積 / 64.00m2
  • 法定延床面積 / 192.00m2
  • 計画着手 / 2011年04月
  • 工事竣工 / 2013年07月
  • 発注者 /

    個人

  • 設計 /

    rhythmdesign Ltd.

  • 担当者 /

    井手・木内

  • 構造設計 /

    黒岩構造設計事ム所

  • 照明設計 /

    モデュレックス福岡事務所

  • 写真 /

    鳥村 鋼一

  • Project Detail /

         
    Title: House in Kasugabaru-minamimachi
    Location: Tomigusuku, Okinawa pref., JAPAN
    Type of Project: Single Family House
    Status: BUILT
    Structure: RC
    Site area: 166.00m2
    Building area: 64.00m2
    Gross internal floor area: 192.00m2
    Commissioned: April 2011
    Completed:July 2013
    Client: Private
    Budget: –

  • CREDIT /

        
    Architects: rhythmdesign
    Project Architect: Kenichiro Ide
    Design Team: Kenichiro Ide, Yuta Kinai
    Structural Engineers: Kuroiwa Structural Engineers
    Lighting consultant: MODULEX FUKUOKA
    Main contractor: IMI CORPORATION
    Photographer: KOICHI TORIMURA

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PROCESS

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